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エッセイ「あやふや」


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ついこの間、句誌「京鹿子」のページをめくっていると、敬愛している和田照海氏の「鬼灯(ほおずき)を揉んで白寿へ近づきぬ」という句が目につきました。
 人生百年時代と言われるほど、日本人の寿命が伸び人生設計の立て直しを迫られる昨今です。先生の「鬼灯(ほおずき)」という季語との取り合わせの意外性が際立ち、「白寿」という措辞にとても魅せられ、ロマンすら感じ、とても心に響きました。
 むかし若かったころ詠んだ俳句「寒の月歩み来た道真一文字」を、先生が、「人が過去を振り返るとき生きてきた道が見えてくる。曲がりくねった道、消えそうな細い道など。幸枝さんの過去はゆるぎない一本道であると」と評価していただいたことがいまだに忘れられませんが、若いときは、それ程がむしゃらに、ひたすら前だけを見つめて、あやふやな一本道を息を切らせてひたすらまっすぐに走り、ギャラリー業に励んでいたようです。六十歳の還暦からはじまり、古稀、喜寿、傘寿、米寿を過ぎて今年は卒寿。やがてまもなく白寿を迎えます。
 そんな私も、年を取ると体中が老化して動きが鈍くなり、今までできていたことができなくなってきました。とても悲しいことですがこれは防ぎようがありません。だから老いと仲良くお付き合いさせていただこうかと覚悟を決めました。
すると、面白いことに見落としていたものが見えるようになります。できないなりにできるように知恵を絞ってできるように工夫をするようにもなります。だからこの頃は「年を取ったからこそ新しい世界が開けるかもしれないと、わくわく感が蘇ってきました。この調子で年を取ってまいりますと、白寿に到達すればどんな世界が見えるでしょう。まさにロマンです。
私の進む道はあやふやかもしれませんが自分のやれるだけの楽しいことをやって過ごせばきっと素敵な白寿を迎えることができるだろうと、心がはずみます。


by gallery-sato | 2024-07-20 14:47

ギャラリーさとう:幸枝の公開日記です。感動いっぱいで綴れれば幸いです。


by gallery-sato