2021年 12月 03日
生ききる 2021.12.3.
二十六年も続けているギャラリーで作家の作品を通して、常日頃から感性の豊かさを大切に育みましょうと言い続けてきた私。ちかごろすっかり老いて、若い時のように活発に動けなく、制約が多く、ともすれば、若かった時のように活躍することができなくなり、これではギャラリーを続けることはむつかしいかもと、沈みがちでした。
多少くたびれていてもしっかりと咲ききっている花。この健気な花のようにあきらめることなく私も私のやり方で私らしく生ききることが大切と、背中を押されたような気がして、気持ちが明るくもなりました。
古民家とまではいかなくても昭和の和風建築の、畳の座敷あり、土間在りの雰囲気のあるたたずまいの中で、オーナーお手製の「あんこ」とお茶でくつろぎながらじっくりと作品と向き合い、作家の情熱を見届ける。
「買う」「買わない」はさておいて、ギャラリーを遊びの空間、憩いの空間として楽しんでいただく。作家さんのほうも展示会を通して売り上げだけでなく何か得るものがある。
そんな個性豊かな理想のギャラリーにしてみましょうとひそかに情熱が燃え始めたようです。
そしてやがて自分らしく生ききることの美しさ、楽しさをしみじみ味える日が来ることでしょう。
2021年 10月 03日
ああ…・無情 2021 10 3
私は住宅地の中で古民家とまではいかないクラシカルな和風住宅を少々改装してささやかなギャラリーを二十六年営む八十六歳の女主人。以前はできていたことも年を取るとできなくなることが多い昨今、もう二十六年も店を続けていると惰性で仕事を済ますようになって、これではいいことはできないとおもいはじめていました。
そんな暑い盛りの八月、駐車場の大家さんから、突然、ギャラリー創設以来ずっと使用させていただいていた隣接の駐車場の土地を「ゆえあって売却した。使用は九月まで。」とのお話があった。あまりにも突然の話なので「ああ…無情」と絶句してしまいました。
身体の不自由な身のこなしの悪い老人の所為でしょうか、それとも、長年積み重ねてきた経験から生まれる知恵からでしょうか、慌てることなくじっくり対策を考えてみることにしました。
さすが、車社会の今日、ごく近くに三か所のコインパークを発見しました。しかも料金は四十分百円~二百円。元々大家さんに月額数万円の「駐車場借り賃」をお支払しているわたくし、そのくらいだったら来廊のお客様へのサービスは十分可能。嬉しくなり気分も次第にほぐれ、ユニークな「さとう」ならではの対策案があれこれ浮かんできました。
例えば差し上げる駐車料金二百円に、次回来廊の際にはお買い上げの作品一品に限り一割、値引きさせていただくという特典付きのスペシャルサービスサービス券を添えるとか。店内では個々の作家に依頼して制作中に聴いたり、作家自身の好みのBGMをお持ちいただいて流してみるとか、心が前向きになると人間は不思議なもので、今まで以上に心が弾んで、ユニークな新しい対策案がつぎつぎ浮かんで、惰性から脱皮が出来たようです。
そこで、つくづく思ったのです。この突然の話は「無情の雨」でなく、むしろ、天が授けてくださった「恵みに雨」ではなかろうかと。かつて読んだ書物の一節「生きる歓びも悲しみも苦労を克服することから生まれ、人生の陰影を濃くし、かけがえのないものにするのです。」という一節もよみがえってくるのでした。
さてさて目標の九十歳まであと四年、我がギャラリーの元来のテーマー「感性を豊かに」をしっかり守って、元気にギャラリーさとうの総仕上げと参りましょうか。
