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   つ ぎ あ て

   うも歳をとりますと人間のからだもいろいろなところが老朽化して、つぎを当て補修しなければ、と思い始めるものです。

「つぎを当てる」(悪くなった所を修理する)なんて言葉は物のあふれた世代に生きる若い方々には縁遠い、彩の冴えない言葉かもしれませんが、八十七歳の老婆には懐かしく、いとしい言葉なのです。

んなわけで今年の夏休み、私の「からだ」の二か所の老朽化した、ほころびに継ぎを当てることにしました。一つ目は耳です。聞き返すことが増えたり、テレビのボリュームが大きいと言われたり、が多くなったので耳鼻科を受診して補聴器という「つぎあて」をすることにしました。近頃の補聴器は驚くほど性能がよく、耳に入る音を検知して、騒音の音量を自動的に抑え、安定した会話が耳に入ってきます。耳栓の機種も軽くて目立つことなく、耳にぴったり合うようにできていて違和感がありません。おまけに補聴器をスマートフォンにつなぐと通話の声が直接届いたり、どこかに置き忘れてもその位置がアプリに表示されるためすぐ置き忘れた場所がわかるということです。そんな素晴らしくスマートな最新鋭の補聴器を耳に使用していると思うと、若者が超最新鋭のスマートフォンを手にしたのと同じくらいわくわく感を覚え。きぶんが若返ったようです。

て、二つ目の「つぎあて」は上瞼の筋肉が老化してきたせいでしょうか、垂れ下がって、物がめっきり見えにくくなってきたので、外出時こけでもしたら大変と、近頃の若者たちが美容のためにしている二重瞼手術と同じような、眼瞼下垂手術を受けたのです。美容のためではないと自分自身に言い聞かせてはいるものの八十七歳のお婆さんが、と思うとなんだか気恥ずかしく思いながらも、かなり重い決心をして手術に臨みました。何のことはないさほど痛くもなく片目十分、両目で二十分ぐらいで簡単に済み、経過も好調でした。何はともあれ瞼を切開し、重い瞼を引き上げたのですから、すっきりした目元になり、表情もこころなしか優しくなっているようです。

 かげさまで出会う人から「近頃、なんだか雰囲気が若く見えるわ」とか「あら、可愛いわね」などとお声がけをいただき、それがお世辞だと分かってはいても女は幾つになっても嬉しいものです。

 これら、この二ッの「つぎあて」がこれから終末期を迎える私の人生にどんな彩りを添えてくれるでしょう。おりしも紅葉の季節がやってきます。


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# by gallery-sato | 2022-10-04 17:14

天使になったおばあさん  

月は「変身」というお題をいただきましたが、私のようなおばあさんが何に変身したものか、たいそう困りました。

かし、子供のころはしばしば大きな翼の鳥に変身して、気持ちよく大空を舞ってみたいとか、ちょうちょうに変身して、ひらひらと美しいお花畑を時には甘いおいしいお花の蜜を吸いながら飛びまわってみたいと空想したものでした。

んな無邪気な幸せな幼少の時代は瞬く間に過ぎやがて一人の女性として結婚し、主婦ではなく嫁という立場で生き、母となり、子育ても終え、介護の末義母も見送り、五十八歳で寡婦となる。そして生活のため、ギャラリーのオーナーという職業を見つけ、おかげさまで店を今日まで二十六年つづけてきました。

れなりに生きて、いろいろ経験をさせていただきました。幾つかの苦しいときや悲しいときもありました。たまにはたのしいことやよろこばしいこともあり、泣いたり笑ったりの歩いてきた後を振り返ってみると,なんと八十六年。長く生きてきたものだとつくづく思っています。

を取り、体が思うように動かなくなった今は、ギャラリーを二十六年楽しく続けてきた自分に満足し、支えてくださる方々に甘え、もう今までのやり方を固持するのではなく、他人様のいいところは、頭から無視するのではなく、なぜそれがいいかを見極めたうえで、自らの中に取り入れられるようになりました。

を取りますと、どんな人の言葉にも耳を傾け、大抵のことは受け入れられる寛容な心が芽生えるものだと自分でも感心しているこの頃です。

て、そのせいでしようか幼いころに変身を夢見ていたように、今の私は背中に小さな羽根を付けた天使に変身して宇宙を遊泳してみたいと思い始めています。そして時には人々にキューピットのような「愛」でなく「豊かな感性」という矢を飛ばしてみたいのです。人々の感性がより豊かになって、生きづらい世の中が少しでもゆるやかになればいいのにと、想像を膨らませています。

い年月を生きてきたわたくしですがまだまだ工夫次第で新しいことに挑戦できそうです。

もう少しの間お仲間と仲良くさせていただいてこの世で楽しく愉快に暮らしたいと願っています


# by gallery-sato | 2022-05-25 11:12

ギャラリーさとう:幸枝の公開日記です。感動いっぱいで綴れれば幸いです。


by gallery-sato