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 今年の夏は特別に暑かった。老体にはかなり応えついとブログを
怠けてしまつた。幾分秋の気配が漂い始めたので早速・・・・・。
10月のエッセをご笑読ください。

は住宅地の中で古民家とまではいかないクラシカルな和風住宅を少々改装してささやかなギャラリーを二十六年営む八十六歳の女主人。以前はできていたことも年を取るとできなくなることが多い昨今、もう二十六年も店を続けていると惰性で仕事を済ますようになって、これではいいことはできないとおもいはじめていました。

んな暑い盛りの八月、駐車場の大家さんから、突然、ギャラリー創設以来ずっと使用させていただいていた隣接の駐車場の土地を「ゆえあって売却した。使用は九月まで。」とのお話があった。あまりにも突然の話なので「ああ…無情」と絶句してしまいました。

 体の不自由な身のこなしの悪い老人の所為(せい)でしょうか、それとも、長年積み重ねてきた経験から生まれる知恵からでしょうか、慌てることなくじっくり対策を考えてみることにしました。

 すが、車社会の今日、ごく近くに三か所のコインパークを発見しました。しかも料金は四十分百円~二百円。元々大家さんに月額数万円の「駐車場借り賃」をお支払しているわたくし、そのくらいだったら来廊のお客様へのサービスは十分可能。嬉しくなり気分も次第にほぐれ、ユニークな「さとう」ならではの対策案があれこれ浮かんできました。

えば差し上げる駐車料金二百円に、次回来廊の際にはお買い上げの作品一品に限り一割、値引きさせていただくという特典付きのスペシャルサービスサービス券を添えるとか。店内では個々の作家に依頼して制作中に聴いたり、作家自身の好みのBGMをお持ちいただいて流してみるとか、心が前向きになると人間は不思議なもので、今まで以上に心が弾んで、ユニークな新しい対策案がつぎつぎ浮かんで、惰性から脱皮が出来たようです。

こで、つくづく思ったのです。この突然の話は「無情の雨」でなく、むしろ、天が授けてくださった「恵みに雨」ではなかろうかと。かつて読んだ書物の一節「生きる歓びも悲しみも苦労を克服することから生まれ、人生の陰影を濃くし、かけがえのないものにするのです。」という一節もよみがえってくるのでした。

てさて目標の九十歳まであと四年、我がギャラリーの元来のテーマー「感性を豊かに」をしっかり守って、元気にギャラリーさとうの総仕上げと参りましょうか。



ああ…・無情  2021 10 3_a0088892_16485867.jpg

# by gallery-sato | 2021-10-03 18:10

「水無月」は陰暦の6月の異名で、陽暦では7月にあたります。しかし、京都では水無月と銘打った和菓子があります。幼いころからの私の大好物でした。

 

る里京都を離れ、岡山へ来てもう五十五年にもなり、すっかり岡山人になったようです。

だけど、近ごろ京都での生活の記憶をたどり、なつかしむことが時にあります。年老いて足腰が弱くなり、もう、以前のようにしっかり前を向いて歩けなくなったから、ついよそ見が多くなったのでしょう。

日、六月の句会で私は『水無月のただ懐かしき甘さかな』という俳句を詠みました。それは、京都では六月になると旧暦の六月のあまり見かけることがありません。

くプルンとした三角形の土台の上に甘煮の小豆がきれいに並んだ水無月は私の幼いころからの好物でしたから一層寂しく、年を重ねるとこんなささいなことでさえ、ふるさとを懐かしく思い出す、という思いの句です。

ころでものの本によると室町時代、六月一日には「氷の節句」という年中行事があり、この日になると御所では「氷室(氷室)」の氷を取り寄せ氷を口にして暑気を払ったそうです。

ころが庶民のほうは氷など簡単に食べられるものではないので宮中の貴族にならって氷をかたどった菓子がつくられたのが「水無月」の始まりだそうです。

「水無月」の白い三角形は氷室の氷片を表したもので、上の小豆は悪魔払いの意味を表しているということです。なるほど昔の人の生活の知恵も大したものだと感心しました。

老いた今、こんなふうに過ぎ去った昔をいつもより、ちょっと深めにたどってみるのも楽しいもの。ひとり満足しています。


水 無 月 2021・7・9_a0088892_16512739.jpg

 

 


# by gallery-sato | 2021-07-09 12:31

ギャラリーさとう:幸枝の公開日記です。感動いっぱいで綴れれば幸いです。


by gallery-sato