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大変な時代がやってきた。  2020.12.31

うとう一年が終わる月、十二月がやってきました。早くも一年が過ぎるのかとあっけなく過ぎ去った日々を振り返ってみました。

 一月はつつがなくお正月を過ぎしたものの、二月ごろからの豪華船「ダイヤモンド・プリンセス号」の新型コロナウイルス感染症患者の発生に始まり、世間はすっかりコロナ禍最中のあり様に変わりました。

 

が咲いても花見にも出かけられず、ましてや会食もままならないありさまで四月を迎え、春の気持ちの良い季節感を味わうことはできませんでした。さらに六,七月になると、ことのほか大雨が降り続き豪雨による水害も多発しましたが、気の毒に、コロナ禍のため助け合いの援助も薄かったようです。七,八月は盛夏の季節。氏神様のお提灯を下げての賑やかな夏祭りや、ドーンと気持ちよく打ち上げる河原での花火大会など、夏のムードを盛り上げる行事もなく静かな暑い夏を過ごし、感染者数が少々収まったかに見えたのも束の間、また十二月入って大きな第三波が押し寄せてきました。こんな状態では年内に新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかりそうにありません。大変な時代がやってきました。

 

 そんな時、ギャラリーを営む八十五歳の媼は思うのでした。思い返してみれば、戦後の物資のない時代を家族の温かい愛情や接する人々のぬくもりと共に、自然に触れ、季節に触れそれらの移ろいを楽しみながら「感性の豊さ」を何よりも大切に暮らしてきた私はとても息苦しい思いがします。

感染予防のため仕方のないことですが、ギャラリー来訪のお客様のマスクで覆われた顔からは、明るい笑顔や作品を見るときの満足げな表情などを見ることのできないのも寂しいことです。早くコロナ禍が収拾してほしいと日々思いが募るばかりです。

 

かし私にとってなによりも有難いのは、ギャラリーで長年、作家の熱の入った作品を眺め、それを創った若者との会話が、感性を豊かにはぐくんでくれていたからでしょうか、今では私をしっかり支え元気付けてくれています。

 

 世間は新しい生活様式とやらでSNSが普及し、人と直接会うこともなく「たくさんの人とつながれる」ようになったり、ネット販売なども盛んになってきました。けれども媼の私は矢張り会って話の、心の触れ合いを大切にしたいという思いから、いまだに、回避に努めなくても三密とは程遠い静かなギャラリーを守っています。

 コロナ禍の激しい昨今、新しい日常とあれやこれやと、格闘しながら人生の終末を過ごすのも私らしいと満足しているこの頃です。


                                        

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# by gallery-sato | 2020-12-31 14:00

先人の励まし 2020.11.9

先人の励まし 2020.11.9_a0088892_17052987.jpg うとうわたくしも八十五歳になりました。このようにだんだん失っていくものがあると自覚するのは年を取らなければ分からないことです。とても寂しいことですが、あれだけ出来ていたのに、もう出来なくなったと気づきます。自分というものの限界を知るのです。

  

はいっても、今まで自分が持っていたプライドが一つひとつはぎとられて行って、若い人たちの活躍を喜ぶことができる自分になることや、他人に頭を下げて生きていかねばならない現実を素直に謙虚に受け止めていくことは口で言うほど、とてもとても生やさしくはありません。そんな折、わたくしをなだめ、落ち着かせて、励ましてくれるのは読書です。


岸節子さんの画集を見ていると、彼女のたゆまぬ精進ぶりがうかがわれ、三岸さんが九十三歳の時に描かれたという「さくら」の絵には、長い歳月を生き抜かれた人だけが持つことのできるおおらかな明るさがあり、たちまち安堵感が満ちてきて、気持ちもシャンとしてくるのでした。


た堀尾真紀子著「女性画家⒑のさけび」のページを開くと、自立した女性の草分けでもあり、背筋の通った明治女性の小倉遊亀さんの「画人像」の挿し絵から、松園の美人画とは違って個性やその人の生活ぶりまでも伝わってくる躍動感が伝わり元気が湧いてきます。


の著書の「あとがき」に「生きる歓びも悲しみも苦労を克服することから生まれ、人生の陰影を濃くし、かけがえのないものにするのです。」と、今の私にうってつけの一文がありました。まさに私の萎えた気持ちをいやすのに十分でた。まるで本の活字から、行間から「佐藤さん、がんばって!」とエールが聞こえてくるようです。


 もそも、読書は知識と教養のためであり、エールはスポーツ競技の時に送る励ましの大きな声援のことだと思っていたものですから、こんな身近なところに、音もなく無言で頼もしいエールがあるとは、今まで気づきませんでした。

の気づきは八十五歳になったわたくしのほのかな心の恵みのようです。ぼちぼちと読書を楽しみながら、前向きの心で、つまずかないよう、つえを突きつつ、ゆるり、ゆるりと歩むとしましょう。


# by gallery-sato | 2020-12-09 18:16